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ヴァンドームの法廷

ボッカッチョの「名士列伝」はアダムから始まる名士の運命の変転を述べた道徳譚。15世紀のフランスで流行していた。この写本は奥書でエティエンヌ・シュヴァリエの女婿で、主税長官だったローラン・ジラールのために1458年に書写されたとされるが、写本装飾画家についてはふれられていない。本文には各章の口絵として半ページ大の挿絵10枚、本文中に81枚の小型挿絵がある。様式比較によってフーケ工房の作とされ、フーケ自身の作もある。
巻頭に別紙に描かれて挿入された「ヴァンドームの法廷」はフーケによる内容的、形式的に独自な作品。場面は1458年大逆罪で死刑を宣告されたアランソン公の裁判。写本制作と同時期に起こった大事件を扉絵として挿入するのは例がなく、ボッカッチョの語る内容が1枚の絵に凝縮されている。
玉座は奥の角、百合花紋の天蓋の下にシャルル7世が座し、左右の壁にはシャルル7世の標章赤・白・緑の縞模様に紋章を掲げた有翼の鹿を配した壁掛けがかけられている。事件についての記録と比較して忠実に法廷が再現されている。法廷内の厳粛さと、前景の人々が示している不穏な動きが画面に緊張感を与えている。
画面前方に角を置く菱形構図はフーケが好んだ画面構成法。
世界美術大全集10 ゴシック2 1450年代
ヴァンドームの法廷
ボッカッチョ作「名士列伝」仏訳本より
フーケ 1458年以降 写本装飾
39×29cm(ページ全体)
ミュンヘン バイエルン国立図書館